確定申告とは、1月1日〜12月31日の所得を翌年2月16日〜3月15日に税務署へ申告・納税する手続きである。フリーランスは白色申告と青色申告を選択でき、青色申告では最大65万円の特別控除・赤字の3年繰越が認められる。2026年改正では基礎控除が最大95万円に引き上げ、少額減価償却資産の上限が30万→40万円に拡大、インボイス経過措置の控除率が80%→50%に変更される。e-Taxによる電子申告が65万円控除の要件の一つ。
確定申告の基本
フリーランス・個人事業主として働き始めたら、避けて通れないのが確定申告だ。会社員時代は年末調整で完結していた税金の手続きを、すべて自分で行う必要がある。
確定申告が必要な人
- フリーランス・個人事業主として事業所得がある方
- 給与所得以外に年間20万円超の所得がある会社員(副業)
- 年間の給与収入が2,000万円を超える方
- 2か所以上から給与を受けている方
- 医療費控除やふるさと納税の控除を受けたい方
フリーランスとして1円でも事業収入がある場合は、基本的に確定申告が必要と考えておこう。事業所得が基礎控除額以下で所得税がゼロになる場合でも、住民税の申告は別途必要だ。
申告期限と罰則
確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日までだ(土日祝の場合は翌営業日に延長)。この期限を過ぎるとペナルティが発生する。
| ペナルティ | 内容 | 税率 |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 期限内に申告しなかった場合 | 15〜20%(自主申告5%) |
| 延滞税 | 税金の納付が遅れた場合 | 年7.3〜14.6% |
| 重加算税 | 意図的な隠蔽・仮装があった場合 | 35〜40% |
注意
期限後申告でも、税務署から指摘される前に自主的に申告すれば無申告加算税は5%に軽減される。「忘れた!」と気づいたら、一日でも早く申告しよう。
2026年税制改正の変更点
2026年はフリーランスに直結する改正が多い。特に基礎控除の引き上げと少額減価償却の上限変更は、手取り額に直接影響する。ここでは主要な5つの変更を押さえておこう。
1. 基礎控除の段階的引き上げ(48万→最大95万円)
これまで一律48万円だった基礎控除が、合計所得金額に応じて段階的に引き上げられる。フリーランスで所得が200万円以下の場合、最大95万円の控除が受けられるようになった。
| 合計所得金額 | 改正前の基礎控除 | 改正後の基礎控除 |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 48万円 | 95万円 |
| 132万円超〜200万円以下 | 48万円 | 88万円 |
| 200万円超〜475万円以下 | 48万円 | 58万円 |
| 475万円超〜665万円以下 | 48万円 | 48万円(変更なし) |
| 2,400万円超 | 段階的に縮小 | 段階的に縮小 |
2. 給与所得控除の引き上げ
給与所得控除の最低額が55万円→65万円に引き上げられた。副業フリーランスで本業が会社員の場合、給与所得の控除額が増えるため、副業側の課税所得も間接的に影響を受ける。
3.「178万円の壁」の新設
基礎控除95万円 + 給与所得控除65万円 + 社会保険料控除18万円 = 約178万円まで所得税がかからない計算になる。いわゆる「178万円の壁」だ。フリーランスの場合は給与所得控除ではなく経費を差し引くため直接の「壁」にはならないが、配偶者控除の判定基準に影響するため把握しておきたい。
ツール紹介
178万円の壁がどう影響するか確認したい場合は、178万の壁シミュレーター(AND TOOLS)で手取り額をシミュレーションできる。また、所得税の概算は所得税計算ツールで即座に確認可能だ。
4. 少額減価償却資産の上限引き上げ(30万→40万円)
青色申告者が一括経費にできる少額減価償却資産の上限が、30万円未満から40万円未満に引き上げられた(年間合計300万円までは変更なし)。たとえば38万円のMacBook Proを購入した場合、改正前は4年間の減価償却が必要だったが、改正後は購入年に全額経費にできる。
5. インボイス経過措置の変更(80%→50%)
免税事業者からの仕入れに対する経過措置が、2026年10月から変更される。これまでは消費税の80%が仕入税額控除の対象だったが、2026年10月〜2029年9月は50%に引き下げられる。その後、2029年10月以降は経過措置が完全に廃止される。
| 期間 | 仕入税額控除の割合 |
|---|---|
| 〜2026年9月 | 80% |
| 2026年10月〜2029年9月 | 50% |
| 2029年10月〜 | 0%(経過措置終了) |
インボイス未登録のフリーランスは、取引先が仕入税額控除を受けにくくなる。まだ登録を迷っている方は、取引先との関係を踏まえて早めに判断したい。インボイス経過措置の影響はインボイス経過措置計算ツール(AND TOOLS)で確認できる。
白色申告と青色申告の違い
個人事業主の確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類がある。青色申告は帳簿の手間が増える分、大きな税制優遇を受けられる。フリーランスとして本格的に活動するなら、青色申告を強く推奨する。
比較表
| 項目 | 白色申告 | 青色申告 |
|---|---|---|
| 届出 | 不要 | 「青色申告承認申請書」を提出 |
| 帳簿 | 簡易簿記(単式簿記) | 複式簿記(65万円控除の場合) |
| 特別控除 | なし | 最大65万円 |
| 赤字の繰越 | 不可 | 3年間繰越可能 |
| 家族への給与 | 事業専従者控除(上限あり) | 青色事業専従者給与(全額経費) |
| 少額減価償却 | 10万円未満 | 40万円未満まで一括経費(2026年改正) |
65万円控除を受ける3つの条件
-
複式簿記で記帳する
仕訳帳と総勘定元帳を作成する。会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生など)を使えば自動化できる。
-
貸借対照表と損益計算書を提出する
確定申告書に加え、期末の財務状況を示す書類を添付する。
-
e-Taxで電子申告する、または電子帳簿保存を行う
紙での提出だと控除額が55万円に減額される。65万円の控除を受けるにはe-Taxでの申告が必要だ。
ポイント
青色申告の届出は、その年の3月15日まで(新規開業の場合は開業日から2か月以内)に税務署へ提出する。届出を出していなければ自動的に白色申告となるため、早めの提出がおすすめだ。開業届の書き方はフリーランス開業ガイドで解説している。
PR
確定申告を自動化するクラウド会計ソフト
複式簿記の知識がなくても、銀行口座と連携して自動仕訳。青色申告65万円控除にも対応しています。
確定申告の具体的な手順(2026年版)
確定申告を「やることリスト」として整理する。初めての方も、このステップに沿って進めれば漏れなく完了する。
-
帳簿の整理(1月〜)
前年(1月1日〜12月31日)のすべての取引を帳簿に記録する。会計ソフトを使っていれば、銀行口座やクレジットカードの取引は自動連携されている。未分類の仕訳を確定し、経費の按分を確認する。
-
決算書の作成(1月〜2月)
帳簿を締めて、青色申告決算書(損益計算書 + 貸借対照表)を作成する。会計ソフトなら「決算書作成」ボタンで自動生成される。減価償却資産の計上漏れがないか、棚卸資産の確認も忘れずに。
-
確定申告書の作成(2月16日〜3月15日)
国税庁の確定申告書等作成コーナー、または会計ソフトで確定申告書を作成する。事業所得のほか、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、ふるさと納税の寄附金控除なども入力する。源泉徴収税額の入力を忘れると、還付金を取り逃す。源泉徴収計算ツールで正確な税額を確認しよう。
-
提出(e-Tax推奨)
マイナンバーカード + スマートフォン(またはICカードリーダー)でe-Taxから電子申告する。e-Taxなら65万円控除が受けられ、還付も早い。詳しくはe-Taxでの申告方法を参照。
-
納税(3月15日まで)
所得税額が確定したら、3月15日までに納付する。振替納税(口座振替)、クレジットカード、コンビニ払い、ダイレクト納付に対応。振替納税の場合は実際の引落日が4月下旬になるため、資金繰りに余裕が生まれる。
Point
インボイス登録済みの場合、所得税の確定申告とは別に消費税の確定申告も3月31日までに行う必要がある。2割特例を使う場合は計算が簡単だが、提出を忘れやすいので注意。
経費にできるもの一覧
経費を正しく計上することは、最も基本的かつ効果的な節税対策だ。フリーランスWebデザイナーを例に、経費にできるものを勘定科目別にまとめた。
主要な経費項目
| 勘定科目 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 消耗品費 | PC、モニター、キーボード、マウス、デスク、椅子 | 10万円未満は一括経費(青色なら40万円未満) |
| 通信費 | インターネット回線、スマートフォン料金、ドメイン・サーバー費 | プライベート兼用は家事按分が必要 |
| ソフトウェア費 | Adobe CC、Figma、GitHub、各種SaaSサブスクリプション | 年払いでも月按分不要(支払時に全額経費) |
| 地代家賃 | 自宅家賃(事業按分)、コワーキングスペース利用料 | 自宅の場合、面積比や使用時間比で按分 |
| 水道光熱費 | 電気代(事業按分) | 在宅ワークの場合、使用時間比で30〜50%程度 |
| 旅費交通費 | 打ち合わせの電車代・タクシー代、出張費 | ICカード履歴や領収書を保管 |
| 新聞図書費 | 技術書、ビジネス書、Udemy等のオンライン講座 | 業務に関連するものに限る |
| 研修費 | セミナー参加費、カンファレンス入場料、資格試験料 | 業務スキル向上に直結するもの |
| 接待交際費 | クライアントとの会食、お歳暮・お中元 | 参加者・目的をメモに残す |
| 外注費 | 他のフリーランスへの業務委託費 | 支払調書の発行が必要な場合あり |
業種別の経費率目安
税務署は業種ごとの経費率の目安を持っている。自分の業種の平均を大きく超える場合は税務調査で指摘されやすいため、目安として把握しておこう。
| 業種 | 経費率目安 | 主な経費 |
|---|---|---|
| Webデザイナー | 40〜60% | ソフトウェア費、通信費、外注費、家賃按分 |
| エンジニア(受託) | 30〜50% | 機材、クラウド費用、書籍、通信費 |
| ライター・編集 | 20〜40% | 書籍、取材交通費、通信費 |
| カメラマン・映像 | 50〜70% | 機材、レンタル費、交通費、スタジオ費 |
| コンサルタント | 20〜35% | 交通費、会議費、ツール費 |
ツール紹介
自分の経費率が適正かどうか確認したい場合は、経費率目安計算ツール(AND TOOLS)で業種別の目安と比較できる。また、粗利率の確認には粗利計算ツールが便利だ。
家事按分(かじあんぶん)のコツ
自宅兼事務所の場合、家賃や光熱費は「事業で使っている割合」だけを経費にできる。これを家事按分という。按分比率の決め方は主に2つある。
- 面積比 - 自宅の総面積に対する仕事部屋の面積。例: 60m2のうち仕事部屋15m2 = 25%
- 時間比 - 1日のうち仕事に使う時間の割合。例: 8時間/24時間 = 約33%
Point
按分比率は一度決めたら年間を通じて一貫して使おう。税務調査で「なぜこの比率なのか」を説明できる根拠(間取り図、作業時間の記録など)を残しておくと安心だ。
よくある経費の計上漏れ
- 個人のクレジットカードで払った業務関連の買い物
- Amazonで購入した技術書・周辺機器
- コンビニで購入した打ち合わせ用の飲み物
- 電車のSuica/PASMO利用(IC履歴を出力すれば証拠になる)
- 自宅のインターネット回線費(按分)
- 業務で使う携帯電話料金(按分)
- 年末に購入したドメイン更新料・サーバー代
フリーランスの節税チェックリスト
確定申告の前に、以下のチェックリストで節税の抜け漏れがないか確認しよう。すべて適用すると年間100万円以上の控除になるケースも珍しくない。
- 青色申告特別控除(65万円) — 複式簿記 + e-Tax申告で最大65万円。課税所得400万円なら約19.5万円の節税効果
- 小規模企業共済(月7万で年84万円控除) — フリーランスの退職金制度。全額が所得控除。受取時も退職所得扱いで税負担が軽い
- iDeCo(月6.8万で年81.6万円控除) — 老後資金を積み立てながら節税。掛金全額が所得控除、運用益は非課税。ただし60歳まで引き出せない
- ふるさと納税 — 自己負担2,000円で返礼品を受け取れる。フリーランスは確定申告で寄附金控除を申請(ワンストップ特例は使えない)
- 経費の漏れチェック — 家賃按分、通信費按分、書籍、サブスクリプション、交通費のIC履歴
- 少額減価償却資産の即時償却(2026年から40万円まで) — 青色申告限定。40万円未満の機材・PCを購入年に全額経費にできる
- 国民年金・国民健康保険の社会保険料控除 — 支払額の全額が所得控除。前納割引も活用すべき
- 生命保険料控除・地震保険料控除 — 加入している場合は忘れずに申告
ツール紹介
所得税の概算計算は所得税計算ツールで即座に確認できる。各種控除を入力して税額をシミュレーションしよう。
e-Taxでの申告方法
e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使えば、自宅から確定申告が完了する。税務署に行く必要がなく、青色申告特別控除も65万円の満額を受けられる。
事前準備
- マイナンバーカード(電子証明書付き)
- ICカードリーダー、またはマイナンバーカード読取対応のスマートフォン
- 利用者識別番号(e-Tax初回登録時に取得)
- 前年の確定申告書の控え(初めての場合は不要)
e-Tax申告の手順
-
確定申告書等作成コーナーにアクセス
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスする。毎年1月上旬から利用可能だ。
-
マイナンバーカードで認証
ICカードリーダーまたはスマートフォンでマイナンバーカードを読み取り、本人認証を行う。
-
収入・所得・控除を入力
事業所得、各種控除を入力する。会計ソフトからデータを取り込むことも可能だ。
-
青色申告決算書を添付
損益計算書と貸借対照表のデータを入力する。会計ソフトで作成済みの場合はデータ連携できる。
-
送信・納税
内容を確認して送信する。納税額がある場合は、振替納税、クレジットカード、コンビニ払い等で納付する。
おすすめ
スマートフォン(iPhone / Android)があれば、ICカードリーダーなしでe-Taxが利用できる。マイナポータルアプリ経由でマイナンバーカードをスマホにかざすだけで認証が完了する。
よくある失敗と対策
確定申告で特に多い失敗パターンと、その対策をまとめた。
1. 期限を過ぎた場合のペナルティ
3月15日を過ぎると無申告加算税(15〜20%)と延滞税(年7.3〜14.6%)が発生する。ただし、税務署から指摘される前に自主的に申告すれば無申告加算税は5%に軽減される。対策: 毎月の帳簿付けを習慣化し、1月中に前年の帳簿を締めることを目標にしよう。
2. 経費の証拠書類を捨ててしまった
「経費にしたいけど領収書がない」というケースだ。対策: スマホアプリで領収書を撮影し、クラウドに保存する習慣をつけよう。クレジットカードの明細やメールの購入確認も証拠として有効だ。電子帳簿保存法により、スキャナ保存の要件を満たせば紙の原本の破棄も可能になっている。
3. 青色申告承認申請書の提出を忘れた
青色申告の届出は、その年の3月15日まで(新規開業は開業から2か月以内)に提出が必要だ。忘れるとその年は白色申告しかできず、65万円控除を受けられない。対策: 開業届と同時に青色申告承認申請書を提出する。書き方の詳細はフリーランス開業ガイドを参照してほしい。
4. 消費税の申告が必要なのに気づかなかった
インボイス制度に登録して課税事業者になった場合、所得税とは別に消費税の確定申告が必要だ。申告期限は3月31日。忘れると無申告加算税が課される。対策: 所得税と消費税の申告はセットで行うと覚えておこう。2割特例が使える場合は計算も簡単だ。
5. 源泉徴収の確認漏れ
取引先が源泉徴収を行っている場合、その分は前払いの税金だ。確定申告で差し引くことで還付を受けられる。対策: 取引先から届く「支払調書」を確認し、源泉徴収額を正確に申告することで、払い過ぎた税金を取り戻そう。源泉徴収額は源泉徴収計算ツールで逆算できる。
6. 事業用とプライベートの口座が分かれていない
同じ口座で事業とプライベートの支出が混在すると、帳簿付けが煩雑になり、税務調査時にも不利だ。対策: 事業用の銀行口座とクレジットカードを開設し、事業の入出金はすべてそちらで行うようにしよう。
PR
確定申告をもっとラクに
複式簿記や帳簿付けに不安があっても、クラウド会計ソフトを使えば銀行口座と連携して自動仕訳。青色申告65万円控除に必要な書類もボタン一つで作成できる。