原価計算入門 ToolShare Lab / Guide

粗利30%確保する
見積書の作り方

「安すぎて赤字になった」「適正価格が分からない」そんな悩みを解決。原価から逆算して粗利を確保する見積術と、値引き交渉への対応方法を解説します。

読了時間: 約10分 更新日: 2026年1月24日

なぜ粗利30%が目安なのか

フリーランスとして持続可能なビジネスを行うには、適切な粗利(売上から原価を引いた利益)の確保が不可欠です。一般的に、粗利率30%が健全な経営の目安とされています。

30%の内訳

項目 割合 内容
原価 70% 人件費(自分の時給換算)、外注費、ソフトウェア費用など
固定費 10-15% 事務所費、通信費、保険、会計ソフトなど
利益 10-15% 税金、将来への投資、貯蓄
バッファ 5% 予期せぬトラブル対応、追加作業

粗利20%以下の危険性

粗利率が20%を下回ると、ちょっとした追加作業や予定外の修正で赤字に転落します。「忙しいのに儲からない」状態に陥る前に、見積り方法を見直しましょう。

原価計算の基本

見積書を作る前に、まず「原価」を正確に把握する必要があります。フリーランスの原価は主に「時間」に紐づきます。

自分の時給を計算する

まず、自分が1時間働くといくらかかるのかを把握しましょう。

年間目標売上: 600万円 年間稼働日数: 220日(週5日 x 50週 - 祝日30日) 1日の実働時間: 6時間(MTG、管理業務除く) 年間稼働時間 = 220日 x 6時間 = 1,320時間 時給 = 600万円 / 1,320時間 = 約4,545円

この計算で求めた時給が、あなたの「原価時給」です。実際には、案件獲得にかかる営業時間、スキルアップの学習時間なども考慮すると、原価時給の1.3〜1.5倍を請求単価の目安とします。

原価に含めるべき項目

見積金額の算出式

原価が分かったら、粗利を確保した見積金額を算出します。よくある間違いは「原価 + 希望利益」で計算すること。これでは粗利率が安定しません。

正しい計算式

見積金額 = 原価 / (1 - 目標粗利率) 【例】原価70万円、目標粗利30%の場合 見積金額 = 70万円 / (1 - 0.3) = 70万円 / 0.7 = 100万円 【検算】 粗利 = 100万円 - 70万円 = 30万円 粗利率 = 30万円 / 100万円 = 30% ✓

ツールで自動計算

当サイトの見積・原価計算ツールでは、原価と目標粗利率を入力するだけで見積金額を自動算出。消費税計算も含めた正確な見積書を作成できます。

粗利率別の早見表

原価から見積金額を素早く算出するための早見表です。

目標粗利率 原価に掛ける係数 原価50万円の場合
20% 1.25 62.5万円
25% 1.33 66.5万円
30% 1.43 71.5万円
35% 1.54 77万円
40% 1.67 83.5万円

工数見積のコツ

見積りが甘くなる最大の原因は「工数の読み違い」です。以下のポイントを押さえて、精度を上げましょう。

WBS(作業分解構造)を作る

大きなタスクを細かく分解することで、見積精度が上がります。「Webサイト制作」ではなく、工程ごとに分解します。

  1. 要件定義・設計

    ヒアリング、ワイヤーフレーム作成、サイトマップ作成など。全体の10-15%。

  2. デザイン

    トップページ、下層ページ、レスポンシブ対応。全体の25-30%。

  3. コーディング・実装

    HTML/CSS、JavaScript、CMS組み込み。全体の30-40%。

  4. テスト・修正

    動作確認、ブラウザテスト、クライアント修正対応。全体の15-20%。

  5. 納品・公開対応

    サーバー設定、ドメイン設定、公開後の確認。全体の5-10%。

バッファを必ず入れる

経験則として、見積工数の1.2〜1.5倍を実際の工数として計上します。これは怠慢ではなく、以下のような「見えない作業」をカバーするためです。

値引き交渉への対応

「もう少し安くなりませんか?」という交渉は避けられません。ここでの対応が、プロとしての価値を左右します。

値引きせずにできる対応

  1. スコープを削る - 「ご予算に合わせて機能Aを省略した場合、〇〇円になります」
  2. 分割払いを提案 - 総額は変えず、支払いを分割して負担感を軽減
  3. 保守契約とセット - 初期費用を下げて、月額保守で回収
  4. 次回案件での割引 - 今回は定価、次回案件で10%割引を約束

やってはいけないこと

根拠なく値引きに応じると、「この人は交渉すれば下がる」と認識され、今後の全案件で値引きを要求されます。粗利を維持できる代替案を必ず提示しましょう。

値引きに応じる場合の条件

どうしても値引きが必要な場合は、必ず条件をつけましょう。

粗利を自動計算して見積書を作成

原価と目標粗利率を入力するだけで、適正な見積金額を自動算出。履歴・テンプレート機能で繰り返しの見積作成も効率化。

よくある質問

見積書の有効期限はどのくらいが適切ですか?
一般的には2週間〜1ヶ月が目安です。それ以上経過すると、市場価格の変動や自分のスケジュール状況が変わる可能性があります。有効期限を明記し、期限切れの場合は再見積もりとなる旨を記載しましょう。
相見積もりで負けないためにはどうすればいいですか?
価格だけで勝負しないことが重要です。見積書に「なぜこの金額なのか」の根拠を記載し、品質・サポート・実績で差別化しましょう。安さだけで選ぶクライアントとは、後々トラブルになりやすいものです。
見積書に消費税は含めるべきですか?
税抜表示が基本です。「小計」「消費税(10%)」「合計」と分けて記載することで、インボイス制度の要件も満たせます。税込総額だけの表示は避けましょう。
追加作業が発生した場合、どう対応すべきですか?
見積書の「前提条件」に、追加作業は別途見積もりとなる旨を明記しておきます。追加依頼があった場合は、作業前に追加費用の見積を提示し、承認を得てから着手しましょう。口頭での追加依頼をそのまま受けないことが重要です。
競合より高い見積でも受注するコツはありますか?
「価格の理由」を説明できることが重要です。使用する技術、品質管理の体制、アフターサポート、過去の実績など、価格に見合う価値を具体的に提示しましょう。また、安い競合の「リスク」をやんわり伝えることも効果的です。